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プロジェクトストーリー

ところざわサクラタウンネットワーク構築

(後編)ところざわサクラタウン 最強のネットワーク施設へ

(後編)ところざわサクラタウン 最強のネットワーク施設へ

現場に入り込み、メーカーと二人三脚で検証を繰り返す日々

髙木は、2020年春に入社。東松は、髙木の前職経験や能力とポテンシャルを評価しており、このプロジェクトを通じて成長の機会を提供したいという思いがあった。ただ、髙木にしてみると入社していきなり、進行中の壮大なプロジェクトに関わることになり戸惑いはあったのだろう。

髙木:

短期間で高速な無線ネットワークを構築するという話を最初に聞いた時は、正直驚きました。私は前職でインフラ構築に携わっていましたが、無線を専門でやっていたわけではなく、複合施設に入れるネットワークの設計と構築は初めてでした。ところざわサクラタウンの理解も追いついていませんでしたし、メンバの皆さんとも初対面の状態で、私に任せて大丈夫なのかと不安が拭いきれませんでした。ただ、周りを見ると他のメンバは多くのタスクを抱えている状況。もう、やるしかないと覚悟を決めました。

東松:

髙木さんはできると思っていましたよ。彼女の経験を活かせる仕事だと考えていましたし、何より髙木さんの吸収能力の高さを評価して入社してもらいましたから。まずは任せて、困った時やどうしても対応が難しい局面が発生した時は、僕が引き受けようと思っていました。髙木さん本人には『できなさそうだったら、一緒に考えよう』と伝えて背中を押しました。

髙木がチームにジョインした2020年春以降、開業にむけて具体的な設計と構築が進んでいった。短期間で低コストに、柔軟かつ高品質なネットワークを作れるのが内製化のメリット。メンバ全員で常にコストを意識し、ネットワーク機器の選定においてもコストパフォーマンスを重視したと言う。さらに、2人はこのプロジェクトを通じて、ところざわサクラタウン完成後の「KADOKAWAグループのインフラ構築サービスのあり方」についても見据えていた。

東松:

当時、KADOKAWAグループ全体に展開できる標準的なオフィスインフラのスタンダードにすることを視野に入れて考えていました。そうなると、機器の選定一つとっても、継続的に取引するメリットの有無は、購買における重要な視点となります。今回の機器選定では、実績がある複数のメーカに対して公平にコンペティションを行い、最終的にAruba社を選出して採用しました。採用理由は、コストパフォーマンスに優れていたことと、メーカーからの技術支援が直接受けられることです。大規模なプロジェクトにおいては、普通なら選ばない最新機種を慎重にフィールドテストして選定した結果、僕たちが日本で最初の導入となりました。狙いは、ファーストカスタマーの意見が積極的に反映されるメリットを活かすことでした。これは、当社が優位に立つことではありません。メーカーも顧客からの意見を元に、より良い改善をしたいと考えます。しかも実際のプロジェクトに伴走する形で改善を重ねる機会が得られれば、双方に意味があります。つまり、メーカーと肩を組んでのインフラ構築を行うことで、このプロジェクトの成功だけに留まらず、将来的にもKADOKAWAグループのインフラ構築に貢献できると考えました。

ここで、髙木のミッション、取り組みにも注目したい。髙木のミッションは、ネットワーク機器の設計と構築、検証。当時、アクセスポイントの設置と、屋内外の無線の設計まではできており、その先を具体的に進める役割がアサインされたという。東松や周囲のサポートも受けながら、どのようなことを大切にしていたのか、向き合った課題を話してもらった。

髙木:

メーカーの技術者との密なコミュニケーションを心がけていましたね。大変だったのは、ホテルに導入したアクセスポイントの設定でした。ホテルはIoT機器とも接続するのですが、オフィスエリアや商業エリアとは異なる個別のアクセスポイントの検証が必要でした。当時、使い方や設定の相談をメーカーのエンジニアと毎週のようにしていたことを覚えています。『こういう使い方はできるか?』『この設定で合っているか?』と具体的なやり取りを積み重ねる毎日。メーカー側が想定していなかった挙動が出ることも日常茶飯事で…。日々密に連携し、解決策を模索していきました。

東松:

メーカーとの連携に加えて、自分たちでも検証の場を持ちました。特に、無線LANのアクセスポイントが正常に動くか、高負荷な通信に耐えられるかの観点で、iOSDC JapanやCODE BLUEといった大規模なIT系カンファレンスに「会場ネットワーク」として提供するなどして実地検証を行いました。これは、構築経験が積めることに加えて、高負荷をかけるテストができる利点があります。メーカーのエンジニアにはこの検証にも同席してもらい、品質や性能、使い勝手を確認していき、ここでも良い連携を行うことができました。

二人がプロジェクトを成功に導くために、最も大切にしていたのは「対話」だった。周囲を巻き込み相談し、共に解決策を模索していくこと。大きなことを成そうとする時には、いかなる場面でも共創が肝になる。そして、機器の設置一つをとっても数々の壁に直面したが、これほどの大規模プロジェクトとなると、他にも現場では数々の課題や事件に直面する。東松から「そういえば、あんなこともあったな…」と、苦労した場面を教えてもらった。

東松:

実は、建物の粉塵が影響して、光ファイバが破損してしまったり、機器のラックが設置できなかったりしたことが起きました。それらの問題があった時期は、ヘルメットを被りハーネスを付けて工事現場へ入り続けたんです。インフラ構築は机上の議論だけでは分からないことも多く、現場で関係者と対話して1つひとつ問題をクリアしていきました。さまざまな関係者の考えが交錯する中で、ひとつの解決策を決めてプロジェクトを進めるのは苦労した点でした。

KADOKAWAグループの次の成長に貢献する「グループ標準ネットワーク」が実現

多くの困難を乗り越え、ところざわサクラタウンのネットワークは2020年秋にサービスインした。東松が率いるチームは、このインフラ構築のプロジェクトの知見を元に、今後は「グループ標準のインフラ構築の仕組み」として他の事例に横展開していく構想を持っている。これは、どのような視点、取り組みから生まれたのか。今後の挑戦も含めて語ってもらった。

髙木:

例えば、組織再編があるとオフィスの引っ越しなどが生じますよね。引っ越しではインフラ構築が必須となります。物理的な引っ越しがない場合でも、再編に伴ってセキュリティゾーンの変更が必要であったりと、大小さまざまな影響が生じ、ネットワーク設計の変更は避けられません。また、個々に設定を変えていくと、特別対応しなければいけないことも同じだけ増えていきます。それに対して、ところざわサクラタウンのネットワークは、あの大規模プロジェクトでユーザが求めるニーズが個々に違っていたにも関わらず、できる限り特殊な設定をなくし標準的な設計で対応するよう心がけました。具体的な声を聞くことでニーズの解像度を高めた後、抽象度を上げて、どういう要件にまとめられるかを意識していました。この営みは、今後のインフラ構築サービスが、KADOKAWAグループ全体のスタンダードになり、質量に加えてスピード展開して貢献できることを念頭に置いていたのです。今後の課題は、運用体制を整えることですが、現状はさほど困っていません。なぜなら、運用でも困らないようにするという設計思想を、InfraArchitect部の全員で当初から共有していたからだと思います。今後の検討を議論していると『サクラタウンみたいにしたいよね』という話がよくあがります。

髙木の発言を受けて東松は、「サクラタウンみたいに」という意見が出るのは、ネットワーク構成が分かりやすくドキュメントも揃っているからだと言う。そして、ところざわサクラタウンのプロジェクトで得られた知見の価値について説明を続けた。

東松:

横展開の話は進んでいます。東銀座のドワンゴ本社オフィス、飯田橋のKADOKAWA本社ビル、さらにはKADOKAWAグループの出版物を取り扱う製造・物流倉庫も。先日は、髙木さんが沖縄にある角川アップリンクに出張し、横展開の検討をしてきたところです。運用面でも価格面でも優れていて、標準化の礎になったところざわサクラタウンのプロジェクトでの知見の蓄積は、サクラタウンのみではない価値があると思っています。

最後に、データセンタのインフラ構築も巨大施設のインフラ構築も手がけたInfraArchitect部での経験は貴重だったと、チームを率いた東松は語る。

東松:

データセンタのインフラ構築経験も、オフィス系インフラ構築経験もあるというスキルの掛け合わせは、エンジニアとしての希少価値が相当高いと思います。いずれも内製でやっていますので、技術力、プロジェクトマネジメント、顧客ニーズの捉え方などあらゆる経験を積めました。僕自身は、マネジメントの観点でも良い経験ができました。プロジェクト期間中、タスクの負荷分散は難しく、僕も含めてかなり忙しい時期があったことは確かです。だからこそ、あえて他のプロジェクトの業務も入れて視野が狭くならないようにしました。メンタルのマネジメントですね。メンバにとっては、うまく気持ちを切り替えられていたようです。

これからInfraArchitect部が着手するのは、他拠点への横展開と、運用体制の構築だ。デジタル技術を用いてDXを推進することで、KADOKAWAグループの成長を後押しする「グループ標準ネットワーク」の価値は、これからも高まり続ける。

PROFILE

InfraArchitect部 部長
東松 裕通
2008年株式会社日立製作所へ入社、ネットワーク機器の仕様策定やテストエンジニアとして従事。合同会社DMM.comに転じ、MVNEの移行企画、ISP事業の立ち上げ、ネットワーク運用やセキュリティに携わる。2017年ドワンゴ入社、ネットワークチームを立ち上げた後、2019年KADOKAWA Connectedに転じ、InfraArchitect部 部長としてデータセンタやネットワーク運用、セキュリティ、インフラ関係の調達全般などをリードしている。

InfraArchitect部
髙木 萌
株式会社朝日ネットで全国規模のISPのネットワークエンジニアとして従事した後、2020年4月にKADOKAWA Connectedへ入社。InfraArchitect部においてオフィス系ネットワークのプロジェクト進行の上流工程を担当するサービスオーナーとして、設計、構築に従事している。

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