きっかけは「イノベーションプランコンテスト」、アイデアのヒントは日常に転がっている
スマホのカメラなどで読み取るとURLなどを表示するQRコード。従来のバーコードよりも多くの文字情報を記録することができるため、広く浸透し、雑誌等の印刷物だけでなく工事現場や電子マネーの支払いまで、あらゆる場所で利用されている。しかし、一度印刷したQRコードは修正することができないため、遷移先のアドレスが間違っていたときは、印刷済みのものはすべて無駄になってしまう。また、イベント等の告知をする場合、URLが定まらない限り、先行してQRコードを印刷物に掲載できないという課題もあった。
この問題を解決するのが「QRouton」。予め発行した短縮URLをQRコード化することで、短縮URLに紐づくリンク先アドレスを後から何度でも変更することができるのだ。「便利なQRコードを更に便利に使うWebサービス」として、既存のQRコードの不便を解決する主な特徴として以下のポイントが挙げられる。
・万が一遷移先アドレスに変更が生じても管理画面からリンクの修正が可能
・内容がなくても先にコードだけ発行可能
・23文字という短い文字列からコードを生成しているため解像度が高くなり、読み取りにくさが解消する
・スケジュール管理機能により情報解禁日が指定できるため、事前にQRコードだけ配布することが可能
・アクセス解析機能が標準装備
・複数の管理者を設定でき、利用権限の範囲を定めることが可能
・短縮URLに独自の文字列を設定可能(特に指定しない場合はqrtn)
QRoutonは、KADOKAWAグループの「第一回イノベーションプランコンテスト」で、200を超えるアイデアの中からグランプリを受賞した。「イノベーションプランコンテスト」とは、従業員の想いを事業に結びつける取り組みである。従業員自身が、新規事業や業務改善の企画を考えて経営層に提案することで、アイデアを出しやすい土壌を作るとともに、ビジネススキルの向上も目指しているのだ。そして、QRoutonのサービス開発にあたったのがEngineer Lab部の小林美彦と魚住行弘で、二人から開発ストーリーを話してもらった。
魚住:
面白そうだったので、複数の企画でエントリーしました。その中から、QRoutonが採用されました。実は、夜の微妙なテンションのときに思いついたものを、30分程度で企画書にしたんです。もともと、設定したURLを後から変更できないという既存のQRコードの使いづらさを改善するアイデアがあって、KADOKAWAは出版社でもあるし、印刷の課題解決にも役立つ企画だから親和性が高いだろうな、と。ただ、まさかこれがグランプリになるとは思いませんでした。
同コンテストに、QRouton以外にも5つほど企画を出したという魚住。小林も普段から複数のアイデアを温めているといいます。アイデアをどのように見つけ、企画に育てていくのでしょうか。
魚住:
常にアイデアの断片のようなものが無数に頭の中にあって、それを意図的に放置しています。そして、これとこれを組み合わせたら使えそうという形をメモに残してアイデアを育てていきます。その断片は、最初は玉石混交です。なにが玉になるのか見当もつきませんが、徐々に玉になる見込みのある石を磨いていく感じです。
小林:
僕も常に100個くらいのアイデアがあります。不便なのが嫌なんです。日常でめんどくさいと感じたときに、解決方法のアイデアをメモで残します。自宅でTVをつけている際は、CMが好きで見ています。何が売出し中なのか、この時間帯に大量に放映するということは、ユーザー想定はどこにあるのか、どんなニーズがあるのか……という視点で考えます。そして自分のアイデアに近い発見があれば価値をつけて、更に深く考える過程を繰り返しています。
クルトンという響きも、コンテスト出品時には既に魚住の頭の中で出来上がっており、2人からはアイデアが閃く瞬間についても語ってもらった。
PROFILE
Engineer Lab部 部長
小林 美彦KADOKAWA Connected Engineer Lab部部長。部門全体のピープルマネジメントを担いつつ、ストラテジストとしてシステムの開発プロジェクトや、新規・既存サービスの戦略策定の責任者としてメンバーの支援も行なっている。
Engineer Lab部
魚住 行広KADOKAWA Connected Engineer Lab部所属。フロントエンドエンジニア、EC事業担当を経てWebディレクター。
最近は新サービスの企画・提案、既存サービスのグロースなどを行っている。